新疆ウイグルの今にも通ずる
ヘディン最後の西域旅行記、三部作の第二巻です。
内容的には、旅の全体を回顧したものです。(一巻は、旅の中で思いがけず遭遇した危難を中心に書いたもの。三巻はヘディンの目的ロプ・ノール湖の調査を書いたものなので)
ヘディンの「考古学的探検記」を読んでみたい、という方はとりあえず三巻の「さまよえる湖」から先に読むことをおすすめします。その上で、旅の背景に興味を持った方はこちらもどうぞ。
というのも、この巻は「探検」でも「考古学」でもないので。
当時、彼が見た南京からウルムチまでの旅路が、淡々とつづられています。
ウルムチでの軟禁生活のような事件もありますが、基本のトーンは淡白。退屈といえば、退屈です。
でも、史料的価値というのは、すごくあるんじゃないかと思います。
この場所は、中国なのか、違うのか。
戦いは、「戦乱」なのか、「内乱」なのか。
中国政府の思惑。外国人たちの思惑。
満州にいる日本軍の影もさしています。
テロが起きたり、それが軍に鎮圧されたりしている昨今の新疆ウイグル地方ですが、なぜ、「今」そういう状態になっているのか?……この本の中の「過去」に、ヒントがあるように思えます。
新疆ウイグルに興味のある方には、ご一読をおすすめします。
単調さを単調でなく描く
戦争・道路・湖水を扱ったヘディン三部作の第2作。 道路を扱ったものである。前半は北京から戦乱の新疆までの行程、後半は第1部と第3部を間に挟み、ウルムチでの軟禁生活から帰還まで。 前半は正直言って今ひとつ単調。 行程が砂漠の中で自然はひたすら単調、広漠として人煙なき雰囲気は伝わってくるが、中途の都市、集落などの記述はどうも盛り上がらない。 ここまでで終わればせいぜい星2つ。 後半は俄然盛り上がってくる。 第1部の雰囲気を引きずり、戦乱の新疆の渦中に放り込まれたヘディン一行が如何に困難をくぐり抜け、目的を達成するか。 あまり協力的でない総督盛世才の手から如何に抜け出すか。 じりじりとした緊張感もあり、単調さの中にも緊張感のある生活などが眼前に浮か!び上がるようである。 血湧き肉躍る冒険譚とはいかないが、かえって現実的な冒険譚となっている。
中央公論新社
さまよえる湖 (中公文庫BIBLIO) チベット遠征 (中公文庫BIBLIO) チベット旅行記 4 (4) (講談社学術文庫 266) チベット旅行記 2 (2) (講談社学術文庫 264) チベット旅行記 3 (3) (講談社学術文庫 265)
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