愛するがゆえに美しく、醜く、切ない
フランシス・ベーコンの絵を見たことのある人ならば、いかにこの映画がベーコンの絵と同じ世界観を持ち合わせているのかがわかると思う。実際、演じている役者もベーコンそっくりである。ベーコンの愛憎が画面いっぱいに溢れ出て、美しく、醜く、そして切ない。見終わった後は、心にずっしりと重い鉛を打ち込められたよう。自分の内面からほとばしる感情を思いっきりキャンバスにぶつけた、それがベーコンという画家で、だからこそ彼の絵は見るものの心を捉えるのだと思った。ベーコンを理解する上でも、またベーコンを知らなくとも十分味わえる映画。個人的にとてもとても好きな映画だ。
余談になるが、邦題の『愛の悪魔』より、原題の『Love is the devil』の方が内容を言い得ていると思う。
宣伝文句に反して「プラトニック」
20世紀を代表する実在の画家フランシス・ベイコンとその恋人ジョージ・ダイアーの出会いから、「終わり」まで。芸術家・平凡な恋人・同性愛。 とくれば、おのずと結末が判ってしまう内容ですが(例え実話だとしても)、なんだか雰囲気が良かったのです。 二人して美術館?に行くシーンなどが、とても静かで。ぐるぐると感じる酩酊感も美しい。 物語よりイメージ重視という感がありますが、個人的に、そのイメージ映像がフランシス・ベイコン本人の絵より好みだったので、オール・オッケーなのです。 明るい内容ではないし、クセがあるし、結末も・・・ですが。酷い仕打ちをしているにも関わらず、ベイコンのダイアーへの愛情を感じるような気がしました。(あからさまなシーンも無いのが良かった) 惜しむらくは、ベイコンの友人たちとダイアーの間にある「教養の差」がイマイチ伝わってこなかったこと。ダイアーの方が御上品に見えてしまってはいけないんでは・・・。 知っていると面白い点として、ベイコン、ダイアーもそうですが、イザベル(ティルダ・スウィントン)まで本人そっくりです。ベイコンが入っていく展覧会のショットなども、当時のものにそっくり似せてあったりします。 あまり関係有りませんが、フランシス・ベイコン役は英ドラマ『修道士カドフェル』でカドフェル役を演じているデレク・ジャコビです(同名の小説もあります)。温和な修道士役だったので、御存知の方がどちらも観ると、かなりの衝撃で面白いかもしれません。
アップリンク
心は孤独な数学者 (新潮文庫) Bond on Set: Casino Royale 007 カジノ・ロワイヤル (初回生産限定版) [DVD]
|